税理士・会計士の方へ

会員インタビュー

税理士法人大樹天野 賢治 1980年5月生まれ。
2001年五藤経営会計事務所(現・税理士法人大樹)入社。
2018年京都大学経営管理大学院EMBAプログラム修了。
将軍の日(中期経営計画作成セミナー)で延べ400社以上のお客様の経営計画作りを支援。お客様のしあわせ実現に向けて、日々組織構築と経営計画の目標達成管理を支援している。また、現在は会計事務所の限界を突破するため、業界連携を深め、会計業界の発展に邁進中。

MAS監査担当者になったきっかけとMAS監査業務を始めた当初に感じたことを教えてください。

入社当初は税務と相続を中心に担当していましたが、24歳のときに初めてMAPサロンに参加し、未来会計という分野に出会ったのです。それはもう、衝撃でした。今まであまり触れてこなかった「未来からあるべき姿を逆算する」という考え方や、経営改善のノウハウの話を聞くことができました。あの頃の私は、税務の担当としていろいろな経営者の方とお話をする機会がありましたが、「業績の悪い会社の経営者ほど、若い自分を頼りにしてくれない……」という悩みを抱えていました。未来会計の話を聞き、若い担当者でもお客様に貢献できるというイメージが湧き、すぐに代表に「MAS監査担当にしてください!」と志願しました。
そうしてMAS監査業務に携わるようになりましたが、初めのうちはとにかく頭でっかちというか、空回りしてしまって(笑)。たくさん事例を聞いて勉強して、それをそのままお客様の状況や考えに合わせず押し付けてしまっていたのです。そのやり方ではもちろん、全然うまくいきません。当然ですよね。ノウハウを伝えればいいという話ではないですから。MAP経営主催の研修を受講して「お客様が主役」、「お客様の中に答えがある」と気づいてからは変わっていきました。お客様の課題を深掘りして整理し、お客様自身に合うものをお客様が考えて実行できるようサポートする、それができるようになるまでずいぶん失敗も重ねましたよ(笑)。

MAS監査を提供するなかで特に意識していることはありますか?

特に意識していることは、「経営者の協力者をいっぱいつくること」です。社員、幹部、銀行にどれだけ協力者になってもらえるかがとても大事だと思っています。これまで30件ほどMAS監査を提供してきましたが、特に満足度が高かったのは、経営者と幹部をつなぐ存在になれたときでした。その経営者の方は、今でも当社の絶対的なファンになってくれています。
経営者と協力者をつなぐ存在になるためには、まずは私たちMAS監査担当者が、経営者の一番の協力者にならなければいけません。当社で行っている将軍の日では、社長の計画発表後に私たちも感想を伝えさせてもらっていて、そのときに必ず、「私たちはあなたにとっての一番の協力者になりたいです、一緒に歩んでいきましょう!」と伝えています。
お客様の一番の協力者として「経営者と協力者をつなぐ」のは、決して簡単なことではありません。経営者の信念や理念、やりたいことを伝えるときに、先入観や過去の体験談、他社事例を用いてしまうと、協力者をつくるどころか、敵や不信感といった違うものを生み出す危険性もあります。色眼鏡をはずして、目の前にいる社長の想いにとことん付き合ってパイプ役に徹する、それが今一番気を付けて取り組んでいることですね。

MAS監査業務のどのようなところにやりがいや魅力を感じますか?

私はMAS監査業務の一番の魅力は、お客様に寄り添い、お客様と一緒に成長していけることだと思っています。お客様が成長すると自分も成長でき、自分が成長したらお客様も成長できるという関係が築けることは、他の業務にはない魅力ですよね。
現在、当社では私が中心となってMAS監査の商品開発を進めているのですが、「一生涯お客様の成長に携わっていくことができるラインナップ」を検討しているところです。具体的には、業績向上・目標達成管理を目的とした標準MAS、組織構築のための組織化MAS、幹部育成を目的としたCFOMAS、後継者の育成や株価対策を行う事業承継MAS、財産承継を一緒に考える人生設計MASという5つのフェーズに合わせた商品展開を考えています。お客様の成長フェーズや経営フェーズに合わせ、その目的に応じた支援をすることによって、お客様の歩みに寄り添っていきたいと思っています。

MAS監査の商品開発に取り組み始めたのはMAPサロンでお話しいただいた中部地域会での活動がきっかけだったのでしょうか?

中部地域会で「事務所の標準MASを確立しよう」というキーワードが出たことがきっかけでした。中部地域会とは、志を一にする中部地区の8会計事務所が月に一度集う会です。MASの事業化に向けてノウハウ公開や自己MASの進捗確認などを行っています。ここに集まるメンバーは、困難な課題に直面したときに相談できる大切な仲間です。
4ヵ月に一度は、事務所合同で将軍の日を開催しています。講師は入替制で順番に担当していくのですが、皆が将軍講師としてのいい武器を持っていて、とても勉強になります。開催するたびに刺激をもらい、自社の将軍の日をブラッシュアップしていけます。
MAPサロンで中部地域会のお話をさせていただいたところ、「自分のなかでは会計業界は少し閉鎖的なイメージがあり、ここまでノウハウやツールを全部公開して共有している会があるのは驚きました」という感想を頂きました。中部地域会はもともと4事務所から始めたのですが、この4事務所の代表が寛大で、「ノウハウは全部公開していいよ」と言ってくれる人たちばかりだったのでスタートできたことです。今思い返しても、本当にありがたいことです。「ノウハウを公開するなんてもってのほかだ」という代表の事務所では、横のつながりがなかなか強固になりません。それによって職員の方の成長が妨げられて埋もれてしまうことがあるとしたら、もったいないなと私は思います。情報公開に慎重な先生方にもご理解いただいて巻き込んでいくためには、まずは私たちからオープンにしていかなければいけないと考え、すべてを公開、共有するスタンスはずっと変えずに続けています。

貴社(税理士法人大樹)の事務所としての特徴を教えてください。

経営理念『しあわせ』がよく浸透している事務所だと感じます。理念動画もありますし、採用時、朝のミーティング、2泊3日の合宿など、理念を共有する機会を頻繁に設けています。税務や相続のスタッフもMAS監査を理解し協力してくれるのは、『しあわせ』という理念が浸透していることが理由のひとつだと思います。MAS監査はお客様の『しあわせ』を実現するためのツールであるという認識を共有できているから、皆が協力的になるのです。理念が浸透していることは当社の強みです。
また、自信をもって事務所の経験をお客様に伝えることができるというのも強みだと思います。計画づくり、進捗管理、合宿、経営計画発表会、管理会計の運用、人事制度、会議運営など、自社でやればやるほど、すべてお客様に伝えられるようになります。自社MASはたくさんの気づきを与えてくれます。例えば、経営計画発表会を通して、他部署とのシナジーの生み出し方を学びました。私は自分や自分の部署の目標はしっかり持っていましたが、「私の計画はこうです、これを頑張ります」と主張するばかりではうまくはいかないもので(笑)。他部署の目標も共有して、自分の計画よりも他部署の計画達成を優先する気持ちを持てるようになると、自分の目標達成にもうまく作用して全体が活性化していきました。「ああそうか、本当は皆、相手の部署を助けたい気持ちはあって、それをどう行動に移せば効果的なのかがわからないだけなのか。部署と部署をつなぐ役割って大事だな」と気づけたことは、私にとって転機になりました。先程、「経営者と協力者をつなぐ存在になることが重要」というお話をしましたが、それはこの経験が気づかせてくれたことです。

今MAS監査業務に奮闘されている方にメッセージをお願いします。

MAPサロンでの出会いや様々な恩師との出会いによって今の私があります。特にJa-BIGの岩永經世先生にはとても感謝しています。岩永先生が長年にわたり未来会計の普及活動を推進してきてくださったからこそ今の会計業界があり、会計事務所の既存の業務がAIに奪われていくなかでも、絶望ではなく希望を持って明るい未来を描けているのです。そのバトンを私たちの世代が育て、次につなげていきたい……それが私たちの使命だと思っています!
私は岩永先生の「個人の限界を組織の限界にしない、組織の限界を業界の限界にしない」という言葉にとても感銘を受けました。その言葉の通りに、個人や組織にとらわれず、ノウハウを公開し、事例を共有し、困ったときには知恵を出し合うことで限界を突破し、社会に貢献したいです。それによって、会計業界の社会的地位も向上し、魅力ある業界として人が集まり、好循環が生まれてさらに明るい未来が描けるようになる、そのように思いませんか。私はそう信じていますし、そのように考えている方は、きっとたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。皆さんと切磋琢磨して成長し、一緒に業界を盛り上げていきたいですね。

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